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2023年7月 2日 (日)

暑い日の寒い事件。

今日のコンサートは面白かった。歌だけで無く、楽器も複数あり、何が良いって出演者が絶えず客席の人達に向けて「楽しんで欲しい」メッセージを送り続けていた点だ。クラシックにありがちな舞台は舞台、とばかり客席と遊離したコンサートが多い中、これは珍しく心配りの効いた素敵なコンサートだった。寒さ対策も万全。お目当てのアルトは声にますます磨きが掛かり素晴らしかった。

出演者の技量の高さは言うまでも無く、構成に工夫が見られた出色の音楽会だったと思う。元ちぇちのメンバーと出かけて、車に乗り込むと同時に、「楽しかったね」と思わず言ったのも正直な感想だった。

ところが、一点だけ、大変残念な事があった。丁度入り口に近い席に居た我々の直ぐ側に、二人のお子さんを連れた女性が隅っこに陣取った。その様子からもきっと子供さんが静かに聴けないのは最初から分かっていたと思う。下のお子さんはよちよち歩きで、自由奔放。辛うじてお姉ちゃんがガマンできる年齢。多分最初にむずがった時点で退場になるかな?と思っていたが、案に相違してそのお母さんは顔を引きつらせながらも第一部は泣く子をどうにも出来ないままその場を動くことは無かった。非常にレベルの高いヴァイオリンとチェロ、ピアノの静かな演奏も、赤ちゃんの泣き声に集中出来ない。おそらくは殆どの観客、そして演奏家も気にしていたと思われる。この日までにどれほどの練習を重ねてきただろうと思うと、気の毒で仕方がなかった。個人的にも大好きなラフマニノフの三重奏。じっくり聴きたかった。。。。結果的には休憩中に係員がやってきて、丁寧に説明して、親子席がありますので、と移動を促し一件落着。が、これに怒りを顕わにしていた男性もいた。よく解る。これは、入り口でなんとかならなかったのか?どういういきさつで会場に足を運んだのか分からなかったが、どうしても来たかった事情はあったのだろう。が、このお母さんはおそらく一切コンサートを楽しめないばかりか、ただただ人々の視線に晒されて、辛い時間だったのではないか。この人の気持ちには同情を禁じ得ない。

以前このブログにも書いた記憶があるが、某有名指揮者の演奏するオーケストラの演奏会でも同じような事が起こった。その時は、し~んと静まりかえった大ホールの中、舞台で演奏者に向かい一度はタクトを振り上げた指揮者が、その手をいつまでも下ろさず、一向に演奏が始まる気配が無い。聴衆も指揮者の背中を見ているばかりで、次第にざわつき始める。赤ちゃんは会場の雰囲気も感じているのか、全く泣き止むことが無く、ますます激しく泣く。遂にガマンできなくなった近くの観客が動き、直ぐに係員も駆けつけ、みんなでわらわらと親子を連れ出した。と同時にそのタクトは振り下ろされ、壮大な交響曲が見事に演奏された。

その演奏の後、マイクを取った指揮者が静かに語り始めた。私にも子供が居ます。皆さんの中にも親と呼ばれる人が大勢いらっしゃるでしょう。だからあのお母さんのお気持ちは私同様良く解ると思われます。しかし、音楽を鑑賞する力があの赤ちゃんにないのは明白です。ではどうすれば良いのか?私は会場に問題があると思います。日本のコンサート会場はこういう人々の為の設備が出来ていない。。。。と述べて、そのお母さんの音楽を愛する気持ちを考える必要がある、それこそが日本の芸術文化を向上させると締めくくった。これには賛同の拍手が鳴り止まず、、、あれから30年以上が経つ。設備は少し行き渡った感はあるが、完全に利用されていないのも事実だ。まだまだ文化レベルが追いついてないのか。ムムム。

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