一気読み。
「老害の人」という本は予想通りの面白さだった。が、著者も年を取ってきたのか登場人物=老害の人にかなり同情的なのが意外だった。この人は自分よりも三歳若いだけの人。当然感じ方も考え方もこの年齢に相応しいものになるのだろう。
この作者は人間の裏表を容赦なく描く。確かに当たっているとも思えるが、オーバーに過ぎるとも思う。なにも老人の事なら何でも分かっているわよ、というのでもないだろうが、あまりの容赦ない言葉に「そんな老人ばかりじゃ無いわよ」と言いたくもなる。が、全く居ないという程でも無い。「イルかも知れない」と思わせてくれるのがこの人独特の筆力だろう。
先ほど今日の最終のリハビリが終ったが、たまたまこの時間は後期高齢者の女性が多く、若い人は少ないし、男性の老人も2,3人。小説の余韻があったので、ついついその人達を観察することになった。が、一人もこの小説に出てくるような老害をまき散らす人は居ない。静かに若い理学療法士に老いて傷ついた体を任せ、話しかけられれば優しく笑みを浮かべて対応している人が殆どだ。それ以外の人は、そういう対応さえままならない重症の人で、支えられて漸く動いているという状況だ。
この作者の言う老害とは、「人の話を聞かない」「自分勝手に自分の事ばかり喋る」「何度も自慢話に興じる」「過去の栄光を繰り返し蒸し返す」「誰彼構わずお説教する」等々。その枕詞に、「迷惑」が付く。これでは、世代間ギャップどころか、アメリカの分断を連想させる。そこまでではないと信じたい。あれは小説で、従って、何もかも膨らませているだけなんだと思いたい。自分の周辺を見渡してみても、自分より高齢の人々はみんな節度があり、知性もあり、尊敬するべき人々だ。
ま、とはいえ「面白おかしく読んで、そして我が身を振り返る」為の読書だったかも。ち~~ん。