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2022年8月13日 (土)

心の洗濯。

先日のパワー溢れる極彩色の絵と違って、静謐な風が吹き渡るような現代アートK画伯の展覧会に出かけた。といっても鑑賞だけでなく受け付けお手伝いに私の代わりに娘が行くのにくっついていった次第。いつもはドリームフレンズという女性ばかりのグループが展覧会のお手伝いに回る仕組み。その中の一メンバーのアチクシは、さっぱり使い物にならないため、身代わりに娘に参加して貰った。孫べえの夏休みの宿題もあってのことだった。

午前中はお仕事は娘に任せてこちらは階下でもっぱらご夫妻とお喋り。最近亡くなられたヴァイオリニスト佐藤陽子さんの思い出話や、それにまつわる様々な人々との昔話に花が咲いた。本日の画伯のTシャツは池田満寿夫氏の手になる絵が描かれたもの。追悼の意味があるのか?

そしてお互いに時の流れの早さに驚くばかり。帰国してもう六年にもなる。そのNYから帰国した折のとんでもないエピソード。以前にも聞いて驚いたと思うが、細部にわたり聞いてさらに驚く。SOHOのアトリエを引き払って帰国した折、あちらの運送業者に依頼したが、個数にして2200個もあったため、日本の本社からこの数は間違いではないのか?と支社に問い合わせがあったそうな。会社の移動でも500個あればいい位で、個人でその数は信じられないと言われたそうな。しかし、会社も色々調べてあり得ない数ではないと納得してGOサインが出たという。一旦横浜港に荷下ろしをして大型トラック27台分に積み直し、そこから大阪港で再度積み直しだったそうだ。家が一軒建つほどの費用をかけてそっくり移動したという。なんと豪快な。言われてみれば確かに画伯の趣味(?)で集めた原住民の木彫りの人形などもかなりの数に上る。石の彫刻も今回オープンした彫刻スペースに鎮座している。とにかく大きな作品が沢山あって、そういえばSOHOのアトリエで拝見した時もまるで運動場みたいなところで製作されていて、これは移動が大変だろうなあ、と漠然と思ったことがある。あの時はまさか日本に帰国されるとは思わなかったが。

この一連の事は、奥様の大きな愛情から来ている。これまでの画伯の全てを何一つ捨て去ることなく、そっくり日本に持ち帰り、これまでと変わらず絵の制作に取り組んで欲しいということだろう。住む場所が変わっても製作は同じように続けて欲しいという気持ちの表れだ。そう思っても叶わないケースが殆どだろうが、この奥様の立ち位置は明確だ。「夫に、絵をずっと描き続けてもらいたい。」それ以外は何も要らない、ということだ。画家のパートナーとしてこれ以上の人は居ないだろう。

生活は決して華美ではなくどちらかというと質素だが、ご夫妻のまわりはいつも輝いている。昔、此方での帰国パーティの折、沢山の人が集まるというのに、ペラペラの500円のTシャツに旦那様のステテコという出で立ちで出ようとして、ある上流階級の奥様からたしなめられて、その方がたまたま買ってきていた洋服に着替えさせられたと愉快そうに話す。実際はセンスの良い人で何を着ても様になる素敵な女性だが、流石に日本のしかも田舎では、なかなか通用しなかったのだろう。

今日はスマホではあったが、公演の舞台写真をいくつか見てもらった。すると一番に、「シンプルな舞台だけどお金がなくてそうしたって感じじゃないわよねえ。」という感想。「そうか、照明のおかげね。照明は大事。」と言われる。流石の視点。

長い間無理ばかり言ってきた照明さん。今回も無茶なお願いをして、しかもそれをダメとも言わずやってくれた。これまでも、「出世払いで」とかなんとか言い逃れをして安くやって貰ってきたのに、出世しないままお別れになったのは心苦しい。舞台製作のYさんも、「今回も蓮井ワールドを楽しみにしています。」と優しい言葉だった。アマチュアをこうしたプロの人々がサポートしてくれたのは有り難い事だった。

いつか、恩返しすることがあれば良いが、、、。

 

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