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2021年7月10日 (土)

観劇の日。

コンスタントに二ヶ月ごとに芝居を観るというのは、決まり事としてスケジュールに組み込まれているせいで、そこに向かって予定通り動くこととなる。これが自分で選択して好みの公演を観に行くとなると、あれこれ理由が付いて、まいっかとなり後でああ、あれも行けば良かったこれも観れば良かったとなる。おそらくはそういう感じで参加している人が多いのではないか?昨夜もほぼ満席で長い芝居を観た。

大体2時間で終わるのが相場だが、昨夜の青年劇場の公演「キネマの神様」は2時間50分という長さだった。これはほぼ無いなあ。我々ちぇちの公演も何分に設定するかでいつも悩むし、大体2時間でまとめるのが常だ。

しかし、退屈するほど長く感じたかというと、それがそうでもなかったのは、脚本の良さもあるが、役者の技量やテンポの良さも大いにあると思った。

そしてテーマが良かった。時代の流れによって価値がなくなり寂れ、消滅していくものがある。この場合は映画のあり方が変化して、小さな映画館はあぶくのように消え去ろうとしている。しかし、それを憂えたある老人が初めて書いたブログ、それもひらがなばかりの呟きが多くの人々の共感を呼び、あるとき、それを英語版に翻訳してはどうかと言われ大した考えもなくOKしたら、偽名ではあるがどうやらアメリカの超有名な映画評論家の目にとまり、いつの間にかネットの世界で映画の評論合戦となる。方やどう見ても一流の匂いがする評論。かたや趣味で映画が好きなだけの日本の片隅に暮らす老人のたわごと?しかし、それがどんどん交わされていく内にいつの間にか二人の間には不思議な友情のようなものが生まれてくる。そしてその会話が世界を駆け巡り信じられない数の読者が付く。

しかし、物事には終わりが来る。そのアメリカの評論家は癌に冒され、短いメッセージを彼に残してついには亡くなってしまう。日本の一映画好きの老人はその衝撃で引きこもりになってしまうが、友人たちの支えで再びその古い小さな映画館に足を向ける。。。。

この作品は二人の異国の老人が主人公というのが良い。二人とも映画を愛するという点で心底純真だ。他の登場人物たちは若くてエネルギーがあるが、それだけに余分なものを見聞きして本当に大切なものを見過ごしている。やれお金儲けだ、有名になりたいだ、高い地位が欲しいだとか、、、、これが人間というものかも知れない。年を取ることを嘆いてばかりいても仕方が無い。長い人生の中で自分が創り上げてきた宝物をさえ守っていれば、それだけで良いのだろう。

この長い芝居はそう言ってくれてるような気がした。

老人役の「吉村直」氏はテレビではよく見るがほぼ脇役の人だ。それが舞台俳優として立派な声で素晴らしい演技を見せてくれた。それぞれが輝く場所を持っているんだなあと思った。

面白い演出もあった。

ラストシーン近くで、客席に向かってビデオを廻す人が居て、なんとそれがそのままスクリーンの大画面に映し出されたのだ。まるで我々観客があたかも舞台の上の映画館で観客として映画を観ているような具合だ。席が離れていたが、同じグループの友人達が映し出されて面白かった。この大胆なやりかたは、全員がマスクだというのもあって、抵抗がなかったのだと思う。

コロナを逆手にとってワンダフル!

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