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2018年10月10日 (水)

有り難うございました。

私の陶芸の師匠が遂に逝ってしまった。ご本人が望んだことが粛々と履行されたということだ。だからといって哀しみが無いわけではない。あのかけがえのない時間は二度と戻ってこないと思うと、何をしていても自然にこみ上げる物がある。

風の吹き渡る中、または雨音を聴きながら、ある時は夕陽を浴びるまで、静かに音楽の流れる中、粘土をこねながら色んなお話しをした。それだけ引き出しの多い、人生経験の豊富な人だった。行けば必ず手作りの甘酒や美味しい珈琲を振る舞われ、お土産に自家菜園から新鮮なお野菜を採って下さった。わが孫の為に一緒に近くの海岸へ花火を観るのに付き合ってもくれた。吾が母も、認知症が進む前からお邪魔させてもらい、かなり進んでからも上手に絵付けを励ましてくれた。ご両親のお話も色々聞いて、それが私の励ましにもなった。音楽が好きで、わが公演にも来て下さったし、ご自身もオカリナやピアノなどをたしなまれた。多くの友人知人に恵まれるのも当たり前。その懐の広さには、本当に素晴らしいものがあった。アジアの、勉強したいが貧乏な若者に惜しげもなく援助し続け、入院してからもその子達の事を心配されていた。こちらはその理想的な暮らしぶりにただただ憧れたものだ。

今もって、あの時間は我が人生の宝もの。いつまでも脳裏に焼き付いて消えないことだろう。

生き方と死に方の両方をご自身の身を持って教えてくれた。感謝しかない。

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