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2013年6月23日 (日)

お見舞い、そしてコンサート。

昨日ピアノの演奏会に出かける前に、手術が済んで三日目のI元会長のお見舞いに行く。思ったよりお元気そうになられて、これなら案ずるより産むが易しの結果になったかと一安心。病室とは思えない程みんなでケラケラと笑いながらの一時を過ごし、そこからはるばる飯野山の麓までドライブだった。

 

このTさんというピアニストは大学などの支援で音楽講座を何回も開いていた人で、非常にユニークなピアニストと言えるだろう。

何がユニークか。おそらく来場の観客はきっと驚いたことだろうが、喋るピアニストである。普通は演奏が精一杯で、トークなどとんでもないと思っている演奏家が多い筈。ところが、このお方は通常プログラムに書いていそうな事柄を懇切丁寧にトークで説明してくれる。そうすることで演奏する作曲家や曲が作られた背景を、個人的感情と共に表現されるので、聴く人にはその思いが伝染して彼女の感動が直に伝わってくる。彼女が作曲家の運命を悲しめば、観客もそうなる。作曲された状況に彼女が同情すれば観客もそうなる。、、、そうして実際昨日は彼女が感極まって涙涙となり、ショパンの「別れの曲」を弾き始めるとあちこちですすり泣く声が、、、。

まあ、これには異論を唱える人も居るだろうが、、、、例えば、そんなこと喋らないで、技術で表現するべきだ、、とかなんとか。でも、と私は言いたい。それはその作曲家を熟知している人ならそうだろうが、一般の人は殆どそこまでの知識はない。知識無くして演奏を聴く場合、余程感性が優れた人でも、その音楽を理解するのは技術に偏るのではないかと思う。あの人は上手いとか下手という評価だ。

しかし、ああして作曲家の生き様を紹介してもらい、どんな思いで作曲された音楽であるかを知らされると、一気に鑑賞の心が変わる。音楽が何重にも心のヒダに入ってくる。

結局は人の手を通して、人の心に訴えかけるのが音楽だ。とすれば、このTさんのやり方は多くの人に歓迎されるのではないだろうか。、、、、が、これって、誰にでも出来ることではないだろう。あの膨大な量の曲を全て暗譜して、尚かつ曲の合間で全く次元の違うことをやるというのは、、、超人と言わざるを得ない。

そしてもう一つ。我々はよく演奏会に出かけるが、演奏家がどういう事を考え、何を想って演奏しているか、というところまで知る事が出来ないのが通常だ。ところが昨日で言えば、これは全く手に取るように演奏家の心が分かったという点。その曲の何に惚れて、どこに共感し、どう表現したいと想っているかが分かっての鑑賞となった点は非常に素晴らしく感動的だった。

まあご本人も仰るように、ああいうサロン形式の演奏会ならではの試みであったかも知れないが、こういうことを少しでもホールの演奏会に取り入れて欲しいと思ったのは私だけか?同行した義妹もよく分かって楽しめた、と言ってたのをみると他にも同じように感じた人が居るのではないか。

 

はるばる遠くの会場まで出かけたが、こういう時間もいいもんだ。

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