NHKで先日母と観た映画の主演、高倉健のその人となりを紹介する番組を観た。実際は思っていたよりかなり饒舌な人という印象だった。あの映画でちょっと喋らせ過ぎ?と想ったのは、むしろ実像に近かったのか。
番組では俳優としての哲学を彼自身の言葉で喋っていたが、それは全て納得できるものだった。画面の中での佇まいににじみ出ているオーラは矢張りそこから来ているんだろうと思った。この人のことを好きだという日本人は多いだろう。女性はそこに男らしさの一典型を見るだろうし、男性はある意味理想の男性像を見るのかも知れない。
今日の話しでは、任侠もので一時代の映画界を凌駕した彼が、その虚像から逃れてそれまでの会社を辞め、何もかも自分の意に添う映画にのみ出演することを決めたとあったが、そういう生き方そのものに憧れる人も多いだろう。実際そういう人生観にマッチした作品に沢山出演している。かく言う私目はあまり見てないのだが、何本かは記憶にある。「黄色いハンカチ」や「あ、うん」なんてのも良かったし、田中裕子との競演で他にも良いのがあったと記憶している。
、、、しかし、いつの間に81歳。
この年齢は、俳優にとって、いや、この人にとって残酷な気がする。いやいや、そうではなく、今回で言えば路線がちがうんじゃないの?と言いたくなるのだ。
格好いい二枚目、的な存在でなくても、彼を充分生かす映画はあるはず。今回見た映画では、どうしても老いが目立ってしまい、残念な気がした。実像は81歳であんなに素敵なんだから、それをそのまま映画にすれば良い映画になると思うのだが、、、。共演の大滝秀治は6歳年上で、「かくしゃくたる老人、あくまで老人」をキッチリこなしていたんだもんねえ。
ここが、映画と演劇の違いだなあ~。杉村春子という人は、80だろうと10代の娘を演じられた訳で、舞台は演技力や所作なんかで若さを表現できるが、映像はそのまんま。それでも多分カメラマンによってはもっとカバー出来たかも知れないと思うが。
脚本の工夫ってのも、気になった映画だ。言いたいことは分かるけど、彼の滑舌としゃがれ声にも配慮が欲しいところだった。少ない会話の大切な言葉が聞き取れないところがままあり、他の俳優さん達の中で沈んでしまう。まあタケシの役は、しゃがれ声でもいけるんだろうが、、、。(しかし、棒読みだったなあ~タケシくん)
この映画の中で一番光っていたのは田中裕子だったと思う。あの自然さ。美人ではないのかもしれないが、印象に残る。彼女が歌うのを初めて聞いたが、宮沢賢治の作詞作曲という不思議な曲を、「歌手」として刑務所の慰問や山上でのイベントで歌う。歌手というには余りに素人っぽかったが、映画の中では効果的に使われていた。この使われ方は丁度今の大河ドラマで松田聖子が歌っている「遊びをせむとや生まれけむ~~」というアレに似ている。
なんだかんだ言っても、映画って、面白いなあ~。ね、Tさん。
と、ここまで書いて出来心で公式ホームページに出ていた一般の人々の感想を読んでみたら、余りに賛否両論たくさんあって一部しか読めない。ざ~っと目を通したら、極端にダメな作品、というのもあり感動したというのもあるようだ。コレを読むと、ものの見方というものが色々あるということがよく分かる。、、、だから本は売れるし、映画に行く人も居る。これで良いんだ。