本番。
どんなに平常心を保っている人でも、本番は何時もとは違うのが舞台というものだ。過去にも色んな有名歌手と同行し、ヘアーメイクをさせて頂いたこともあり、それぞれの本番前に遭遇した。それぞれがそれぞれのやり方で、その時を乗り越えているのを目の当たりにしてきたが、この独特な緊張感は必ずしも悪いものではない。むしろこういう機会を持つこと、持てることはラッキーではないかと思うほどだ。今日も昨日のゲネに引き続きソリスト達のヘアーメイクをさせて貰ったが、昨日と今日では明らかにみんな違っている。口数が多くなる人、逆に少なくなる人、些細なことが気になっている人、上の空の人、、、、それぞれが自分と闘っているのだ。それでも今日の出演者は舞台経験の多い人ばかりのようで、自分をコントロールする術を心得ているようだた。テノールは、「自分は全くいつもと変わりません。いつでもどこでも平常心です。」と言い切っていたが、これはかなり珍しい人だと思う。かなり羨ましいおみっちゃんではあった。
舞台に於けるヘアーメイクの重要さは長年舞台を手がけてきて近頃ますます感じているところだ。直接本人に影響を及ぼすという点で、衣装と同様重要だと思う。その出来次第で、役に没入できるかどうかが決まったり、歌にも影響があるように思う。今日も魔女役に力を入れたメイクをしてみたが、これが舞台に大いに影響を及ぼしてくれてると信じたい。実際客席からも見せて貰ったが、もしあれがナチュラルメイクだったら、随分違った舞台になったと思えるからだ。帰りに演出から、「お願いして良かったです。」と言ってもらえて、リップサービスだとしても嬉しかった。
しかし、1幕の序曲でオーケストラがまだ終わりきってないのにブラボーという声が聞こえて、てっきりいつものあのお方が来てるのかと楽屋で噂していたが、なんと本物はどうやら志度ホールだったらしい。京都フィルを聴きに行ったというちぇちのメンバーの話では、そちらの方はいつに変わらずお元気だったようだが、そういえば、こちらはそれっきりで後は元気が無かった所を見ると、どうやら別人だったようだ。ふ~っ。
しかし二日続きのこの手のお仕事は矢張り疲れる。夕食後又しても簡易ベッドで爆睡のアチクシ。もしや出演者以上に緊張していたか?フフフ。