昔人間。
母が父の事を「昔人間」と言うとき、それは明らかに自慢話である。今宵早い時間に以前から観たいと行っていた「相棒」 という捜査ものの映画に連れて行った、その帰り道。予想通り、刑事であった父の事を、さも誇らしげに語り始めた。定年退職しても、 他人様が働いているのに、自分だけのんびりは出来ないと、第2の職業を即座に見つけ、文句も言わず倒れるまで働き続けた、と。 「昔人間だだったから、、、、」と始まり、父の人生全般を振り返り、「色んな事があっったけど、あの人は面白い人生を送ったわなあ~。」 と車の助手席で述懐する。それを聞きながら、私自身も父との思い出を回顧して運転している。刑事に憧れ刑事になった人だけあって、 普通の人では味わえないスリルも沢山味わっていたことを、まあ、ほんの一部だろうが、私も知っているのだ。 例えば手錠が無くなったことがあったし、美人女詐欺師を取り逃がし、 こともあろうに我が家でその女性をそうとも知らない家族がお接待したことも!警察手帳を紛失して大騒ぎしたこともあったと、 これは今日母から初めて聞いた。いやあ~、さすが吾が父。全て、結果は円満解決。、、、私にしても、仕事一途の父親を尊敬もし、 正義感というものをしっかり植え付けられもした。ふざけて母のことを「あんた」と呼んだ食卓では、箸箱がこちらめがけて飛んできたことも。 滅多にない休日は、必ず何処かへ家族で出かけ、夫婦仲むつまじいところを写真に撮らせたもんだ。母の作る食事を毎度心から「美味しい~、 美味しかったあ~」と必ず言う父の声は、いつも食卓を明るくしていた。今思えば、「昔の男」そのものだったのかも。
今日の映画は、母のために行ったが、なんとも良くできた面白いものだった。日本映画も力を入れるとこんなのが出来るんだと感心した。 何が良いかと言うに、観る人を操る、引っ張る、考えさせるの三拍子。社会批判がしっかりあって、その中心はマスコミが代表する、「世間」 であった。この作品を、テレ朝だったかの何十周年記念映画として作ったというのは、マスコミの良心とも思え、好ましいものだった。 それに豊富な人材を使い、俳優の演技力を駆使した場面も多く、これこそ映画の醍醐味だった。どアップの画面で、 力のある俳優同士が激しく演技を競い合う様は、ぞくっとする。彼らの目力はもの凄い物があって、おお、日本にもこんな俳優達がいるんだ! と嬉しくなった。相変わらずのガラガラ映画館。この映画は是非オススメだ!
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