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2008年3月 9日 (日)

涙の雨。

 今夜は夫不在の最後の夜。私の帰宅は深夜零時を回っている。 しかしこれが楽しいお出かけでないのが残念だった。昨日の訃報を聞いてから、どんな風に友人Mに会うべきかが頭の中を占領していたが、 思い切って彼女の自宅を訪ね延々3時間語り尽くしたのだ。

 私たちは生前の元気だった時の彼のこと、癌の告知を受けて死に至るまでを、 仏前の写真の前で泣いたり笑ったりしながら喋り続けた。特に、 最後を自宅でと願い退院する前の数日の様子は余りに痛ましくて二人とも嗚咽を抑えられなかった。

 この夫婦は絵に描いたような仲良しで、私はよく「天然記念物的夫婦」 と彼らのことを表現していたものだ。妻の作る食事をこれ以上の味はないと手放しで誉める彼。 ある重大な事件があったときも彼女の前に両手を拡げてとことん「楯」の役割をして彼女を守り抜いた。 モチロン彼女自身それに相応しい生き方をしてきた訳だが、なんのてらいもなく奥さん自慢が出来る、日本人には珍しい男性だった。

 「ほんとに、優しいダンナだった。」と心から言う彼女の横顔は人生で最も大切な何かを「得た」 人の顔だった。短いが、他の人には味わえない素晴らしい夫婦愛を二人して共有できたのだ。 彼女の前では落ち込んだ様子を殆ど見せなかったらしいが、入院中のある日、朝の4時だというのに病院へ来てくれとのご本人からの電話。 10分でも15分でも良いから横に居て欲しいと言うんだそうだ。 少しも待てないらしい様子に慌てて駆けつけると別に特別変わったところはない。それでも何時間かそこにいて、 全く食欲がないので家に一度帰っておにぎりでも作ってくるね、と帰宅すると、家に入るや否や又「来てくれ」の電話。 結局ご飯も炊くヒマが無く、おにぎりも作らずに出かけたらしい。「、、、そんなことがあったのよ。」と淋しげに話すMの言葉を聞きながら、 あの我慢強く精神的に逞しい人がそんなにも孤独に苛まれていたのかと胸をつかれた。

 いつだったか訪ねて彼とお喋りしているときに面白いことを聞いた。「内の奥さんね、 寝ながら歌うんですよ。朝僕が何かの音でむっくり起きあがると奥さんが歌ってるんですわ。僕はしばらく聞いてから拍手したんですよ。 そしたら急にがばっと起きあがってお父さん何しとん?ですわ!内の奥さんおもろいでしょう!?」と言う。「そりゃあ奥さんも面白いけど、 拍手するダンナの方がもっとおもろい、、」と笑った記憶がある。なんともいえないユニークな雰囲気を持った人だった。 人生が全てユーモアで彩られていたのだ。飄々としていて、時々鋭いことを言う。自然を愛し、森林ボランティアもやっていたし、 コスモスの季節は色んな所へ出かけて行った。、、、今日は仏壇の周りに白い花々がいっぱいに飾られて、彼女の気持ちが伺えた。

、、、長い間喋ったがお互いさっぱり時間の観念が無く、表に出ると雨が上がっていた。「じゃあ又ね」 と声を掛け合い、帰路につく。車を近道するべく横道に乗り入れようとしたときパトカーに止められる。何事かと思うと、 浅い地下道になっているところが冠水で、車が通れないという。そういえばあそこで台風の時人が死んだんだ、と思い出した。、、、 ということは、われわれが喋っている間にこんなにも雨が降っていたのか。まるで私たちの涙のように、、、、。

 

 

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