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2006年6月19日 (月)

長旅。

 たった1泊だったにもかかわらず、なが〜い旅をしたという疲労感で一杯だ。博多がカンカン照りだったせいもある。私が行く前日まで雨だったというのに、、、。
 新幹線とマリンライナーを乗り継いで高松駅からちぇちの練習に駆けつける。岡山に着いたときは半分くらい練習お休みの気分だったが、行って良かった。みんなの顔を見たら元気になれた。

 彼の死は、紛れもない事実としてしっかり受け止めて出かけた為に、彼の絵を前に愁嘆場を見せることもなく、奥様と娘さんの手厚いもてなしに、むしろ余裕を持って対応できた。彼女たちのけなげな姿に、全てが終わったときに寂しくなるだろうなあ、との感想を持ちながら、むしろ今は楽しく振る舞うことだと思って過ごす。
 彼の個展を引き受けてくれたのが、私も知らない彼の最後の知己Iさんだった。その人も大変ユニークな人で、ご自身は絵も描くし、陶芸もするし、ガーデニングからそば打ちまで、とにかく凝り性な人らしい。虫三匹を自分の銘にして、虫のように自由に遊んでいるのが自分の人生だと静かに笑う人だ。福岡在住の短歌仲間F氏と同行したが、彼共々Iさんのお庭に案内されて、「蚊や色んな虫が一杯いますからね。ここは新しい命がたくさん生まれる場所なんですよ。」と言われて思わず顔を見合わせる。これはただ者ではない、と目と目で話したものだ。そのお庭で小旅行を体験したアト、F氏が「僕は沢山噛まれましたよ」と腕を見せるとその人は「ああ、有り難うございます、沢山蚊に血を分けてくださって」との答え。まあ、そう思えば腹も立たない。
 そのお庭は陶芸用の作業場から釜から展示室から、特注の檜の露天風呂、最近まで鯉が200匹居たという池、病気で急に50匹死んだそうだが、、、。お茶花というお茶花、なんだか、大人向けのびっくり箱といった面持ちだ。
 実は着くやいなや、この屋のご主人I氏は、「おそば嫌いですか?」と訊いてくる。さっき昼食をたっぷり食べていた私達なのに、「いえ大好きです。頂きます」と妙に気が合う。I氏がここ10ヶ月ばかりそば打ちに興じ、大した指導も受けず自己流で打っているという。しかし、食べてみて驚いた!めちゃおいしい!だしなんか、そば湯で薄めて全部頂いたが、これはまじで美味しかった!いやあ、陶芸も自己流だと言うが、何もかも「センス」が良い。人生は遊びだとはっきり言ってのけるこの人は如何にも我が友人のS氏に似合いの人だった。「まだ素焼きですが、、、と出してきてくれたのは10個ほどの「骨壺」。S氏のために、分骨用に作って居るんだそうだ。思いのこもった良いものが出来ることだろう。
 この画廊では、7月には長峰ヤス子の展覧会をやるそうだ。彼女は絵を描くんだなあ、、、。
 
 長居をし過ぎたような、まだ居たいような気持ちで、我々はその瀟洒な建物をあとに、あっつい西日を浴びながらだらだら坂を歩いてバス停に向かった。今日は泣くまいと心に誓っていたが、最後に奥様とお嬢さんが玄関で見送ってくれたとき、「ご主人にお目にかかれず残念でした」という私の言葉に勘違いをした娘さんが「ホントウに突然の事だったモノで、、、」と答えるのに「あらあら違いますよ。貴女のご主人の事ですよ。一度もお会いしてないものね。お父さんのお顔はこれからずっと私の胸の中に生きてますからね、、、」と口にしたことで、何かが切れた。溢れる涙を納めながら早々にいとまごいをしてその場を去ったが、危なかった。

、、、しかし、もしこれが葬儀だったら行かなかっただろう。個展だと言うから、是非行こうと思ったのだ。私達の若い頃の写真も見せて貰ったが、あの頃はホントに良かったなあ。一緒によく山にも登り、サイクリングやキャンプ、バス旅行など、一杯遊んだ。今ほど自動車も通って無くて、中央通りをリンゴをかじりながらみんなで走ったこともある。私が会社の店頭で仕事中に背の高い彼が首だけ会社の玄関の衝立から顔を出し、茶目っ気たっぷりに笑っていたことや、大山に登山に行く道中、汽車の中で連れは寝ているのに、何時までも延々と何かを喋っている彼に、相づちを打つのも出来ないほど眠くなった時、「貴女、僕の話全然聞いてなかったでしょう!?」といきなり訊いてくるから、びっくり。へ?私が聞いてないことを知りながらあんなにお喋りしてたんだあ、この人!」と新鮮な驚きを感じたことだ。「もう良いから寝よう」と汽車の中でそれからは爆睡したのだが、妙にその時のことが今でも想い出される。変わった人だったなあ、ある意味。フフフ。

 時は流れた。

 彼のデスマスクの写真を見せられたが、矢張り正視出来なかったし、つくずく葬儀でなくて良かったなあ、と、、、、。そうだなあ。私の時も、友人達にデスマスクを見せたくないなあ。奥様や娘さんは頻りに「まるで眠っているようでした。」を繰り返すが、どう見ても「死は死」だ。しかし、それよりも印象に残った写真があった。死の前日に奥様と娘さんが代わる代わる彼の横にくっついて笑顔で映って居る3枚の写真。彼はベッドに座り一切笑わず、顔をまっすぐにこちらに向けじっと何かを見ている。あの目は、画家の目だろう。人生を、人生の真実を見続けてきた彼の心情があの目に宿っていた。そしてそれは、私には覚悟の眼差しに見えたことだ。

 今日も博多は暑かった。寝苦しい一夜をあかし、遅いチェックアウトをしてしばらく博多の街を散策した。何時又来ることがあるだろう?と見回せば有名なお菓子屋さんの本店の前。そうだ、今日はちぇち練だから、何か買っていこう。私の人生は多分もう少し続くんだから、、、とのれんをくぐったのだった。

 

 

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